第44章

そのときだった。聞き覚えのある、胸焼けがするような声が唐突に響いた。

「こいつだ! こいつが俺らに指示したんだよ! 一ノ瀬蘭さんをいじめろって!」

群衆の隙間をこじ開けるように、よれよれの服を着た男が飛び出してくる。頬には殴られた痕、唇の端には血の跡。目は怨みと欲でぎらついていた。

男は一ノ瀬紗月を指さし、唾を飛ばしながら叫ぶ。

「こいつが大金を出したんだ! 一ノ瀬蘭さんの服を全部はぎ取って、動画を撮れって! 世間に晒して、身の置き場がなくなるまで叩き潰せって言ったんだよ!」

一ノ瀬美琴に買われ、偽証の駒にされたチンピラ――まさに、その男だった。

その一言は爆弾みたいに場を吹き飛ば...

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