第45章

九条湊の脳裏に、記者に取り囲まれた一ノ瀬紗月の姿がよぎる。血の気の引いた、あの蒼白い顔。

一ノ瀬美琴と一ノ瀬蘭がどんな手を使うか、彼は知っている。同時に、紗月の矜持も知っている。こんな形で自分を売るような真似を、彼女がするはずがない。

罪悪感と恐怖が潮のように胸を満たした。スマホを握る指が小さく震え、声の硬さがほどけていく。

「……何だって? お前……怪我したのか? 大丈夫か?」

「私は平気よ」

紗月の返答は淡々としていて、そこにほんの少し距離が滲む。

「神谷蓮が間に合って……助けてくれた」

「神谷蓮……」

九条湊はその名を反芻し、腹の底がざらつくのを感じた。

夫は自分のはず...

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