第61章

男は気まずそうに引き下がり、汚い言葉をぶつぶつと吐き続けた。

先頭の男がぺっと唾を吐く。どうやら、いきなり殺すのは惜しいと思ったらしい。スマホを取り出して画面を確認すると、目の奥にいやらしい欲がちらついた。

「くだらねぇこと考えてんじゃねぇ。さっき親分から連絡だ。気が変わったってよ。この女、顔がいい。殺すのは損だ。ミャンマー北部に回せば、いい値がつく。そしたら取り分も増える」

ミャンマー北部――。

その言葉が、一ノ瀬紗月の瞳をきゅっと縮めた。死よりも恐ろしい場所。地獄。行ったら戻れない。

だめだ。逃げなきゃ。

計画が変わったせいで、連中の警戒が緩んだのだろう。どうやって運び出すか...

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