第63章

一ノ瀬紗月がどんな目に遭わされたかを想像するだけで、九条湊の胸はきりきりと締めつけられた。後から込み上げる恐怖と、煮えたぎる怒りが、喉元まで迫ってくる。

「自業自得だろ……!」

九条湊は奥歯を噛みしめた。眼の奥に宿る荒んだ光に、一ノ瀬美琴はぞくりとする。

彼は上着をひっつかみ、踵を返した。

「今すぐ戻る。紗月が――」

「だめ!」

背後から、美琴が勢いよく彼の腰にしがみつく。泣き声は掠れ、必死に縋りつく腕が震えていた。

「湊、行かないで……! もし本当に、うちの両親が刑務所に入ったら、私どうなるの? 私たちの子はどうなるの……? 生まれた瞬間から『殺人犯の孫』なんて言われるの、嫌...

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