第67章

これこそが、本当の一ノ瀬紗月。

九条奥さまという枷を脱ぎ捨てた彼女は、本来こうして眩いほどに輝くべき人だった。きらきらと光を放って。

病院の上級VIP病室には、鼻を刺すような消毒液の匂いが漂っていた。

一ノ瀬美琴はベッドに身を預け、紙みたいに青白い顔をしている。片手には切迫流産予防の点滴がつながれたまま。

ソファに座って眉間に皺を寄せる九条湊を見やり、美琴の瞳の奥に一瞬だけ計算が走る。次の瞬間には目尻が赤く染まり、ぽろぽろと大粒の涙が頬を伝って落ちた。

「湊……」

掠れた声。泣き声が濃く混じる。

「さっき悪い夢を見たの。お父さんとお母さんが留置場でいじめられてて……あんなに年な...

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