第68章

「紗月、そんなに意地を張るなよ」

九条湊が眉をひそめる。声には、露骨な不賛成が滲んでいた。

「今回のことが度を越してるのはわかってる。でも血は水より濃いだろ。あの人たちはお前を産んで、育てたんだ。いい歳して、刑務所で余生を終えろって……本気で思えるのか?」

一ノ瀬紗月は、鼻で笑った。

目の前の、いかにも善人ぶった男。その顔を見ているだけで、滑稽でたまらない。

「それで? 今日わざわざこんな場を用意して、私に何をさせたいの?」

九条湊は深く息を吸い込み、ようやく本音を出した。

「弁護士に相談した。お前が和解書を出して『責任は追及しない』って意思表示さえすれば、外に出せる。紗月……...

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