第7章

一ノ瀬紗月は、まぶたが鉛みたいに重いとだけ思った。

誰かが耳元で必死に呼んでいる。けれど彼女は、欠けた記憶でできた夢の底から抜け出せない。

錆びついた鈍い刃物みたいな回想が、昏い意識を何度も何度も削っていく。

あの年――九条湊は、九条家に放逐された、誰にでも踏みにじられる隠し子だった。

路地裏で道楽息子どもに囲まれ、顔じゅう血だらけで殴られていた彼の前に、紗月は飛び込んだ。名家の令嬢としての立場を盾にして、彼を背中にかばうように立ったのだ。

彼を押し上げるために、一ノ瀬家のあらゆる縁を使った。あの土砂降りの夜には、祖父の部屋の前で一晩中ひざまずいて懇願した。たった一度、九条グループの...

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