第72章

閉め切られたドアを見つめたまま、胸の内が焦りで焼けそうになる。九条湊は苛立ちまぎれに一ノ瀬美琴を乱暴に振りほどいた。

ドアを開けた瞬間、出ていこうとする一ノ瀬紗月の腕を掴んで引き止める。

「紗月、話を聞いてくれ!」

九条湊の目の奥は血走り、声にはこれまでにない怯えが滲んでいた。

今日、このまま紗月を行かせたら――二人は本当に終わる。そんな確信があった。

「離して」

紗月は振り返りもしない。氷を噛んだような冷たい声だった。

「離さない! 明日には、いや、今すぐあいつを追い出す! 出ていけって言う!」

取り繕うように、必死に言葉を重ねる。頭が高速で回転し、紗月に美琴との関係を疑わ...

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