第82章

神谷蓮は部屋の隅にいる一ノ瀬美琴へ、氷みたいに冷えた視線を投げた。圧が違う。まるで悪臭を放つゴミでも見るような目だった。

その一瞥だけで、美琴の勢いは折れた。詰め寄ろうと踏み出しかけた足が、床に縫い付けられたみたいに止まる。

ドアが閉まる。黒いロールスロイスが低く唸り、滑るように駐車枠を抜けて、そのまま闇へ消えた。

残されたのは、美琴ひとり。

遠ざかるテールランプを睨みつけ、奥歯が砕けそうなほど噛みしめる。嫉妬と憎しみで、喉の奥が焼けた。

夜は深い。西山公館。

一ノ瀬紗月はシャワーを浴び、肌触りのいいシルクのパジャマに着替えると、書斎のイーゼルの前に座って今日のひらめきを整理して...

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