第84章

九条湊が陰で仕掛けてくるつもりなら、こちらも最後まで付き合ってやる。元本も利息も、きっちり吐き出させるまで。

夜が落ちた。

玄関の鍵が開く音がして、初秋の冷えた空気をまとった九条湊がリビングへ入ってくる。

腕には、今にも雫が落ちそうなほど艶やかなシャンパンローズの花束。ソファに座る一ノ瀬紗月の姿を見つけた途端、疲れの滲む顔にやさしい笑みが貼りついた。

「紗月。花屋の前を通ったら、君に似合うと思ってさ。買ってきた」

そう言って差し出す目は、露骨なほどのご機嫌取り。

一ノ瀬紗月は顔を上げた。珍しく、冷たくあしらわない。

花束を受け取り、口元をほんの少しだけ持ち上げる。機嫌がいいふり...

ログインして続きを読む