第85章

一ノ瀬紗月は車を高級住宅地の堂々たるゲート前に停め、歩み寄った瞬間、屈強な警備員が二人、すっと前に出て行く手を塞いだ。

「申し訳ございません、お客様。居住者用カード、もしくは来訪予約コードのご提示をお願いいたします」

口調は丁寧だが、引く気配は一切ない。

紗月はわずかに眉を寄せた。ここの警備は西山公館よりも厳重だ。予約がなければ、まず通れない。

どう誤魔化して入り込むか――そう算段していた、その背後。

ぶおん、と挑発的なエンジン音が空気を裂いた。

火のように赤いフェラーリが、見事なドリフトでくるりと尻を振り、ゲート正面にぴたりと収まる。

窓が下り、サングラス越しでもわかるほど派...

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