第91章

彼女は二階の階段の踊り場で足を止め、影に身を潜めたまま、見下ろす形でリビングの一挙手一投足を見つめていた。

九条百合子は一ノ瀬紗月の姿が遠ざかったのを確認すると、胸の奥に溜め込んでいた苛立ちをついに抑えきれなくなる。

二階の方角を指さし、声を落として吐き捨てた。

「あの、いかにも自分が上だって顔……見た? 昨夜の晩餐会じゃ目立ちたい放題。妻としての分際ってものがあるでしょうに。子どもひとり産めないくせに、あんたはあの子を神様みたいに奉って! 美琴がいま身ごもってるのは、あんたの長男よ。九条家の嫡男! いっそその“産めない女”は離縁して、美琴を迎え入れなさいよ!」

九条湊の表情が、すっ...

ログインして続きを読む