第99章

彼女が顔を上げると、澄んだ冷たい瞳に、ほどよい驚きと感動がふわりと浮かんだ。そこに、か弱い女の柔らかさまで少しだけ混じる。

「湊……こんな高価なもの……」

囁くように言いながら、指先で権利証の縁をそっと撫でる。

九条湊は、ようやく彼女の態度が和らいだのを見て胸が躍った。

「俺たちは夫婦だろ。俺のものは紗月のものだ。島ひとつくらい、どうってことない」

一ノ瀬紗月は、彼が頬に触れようと伸ばした手をさりげなく避け、そのまま視線を玄関先へ流した。まだ帰らずに立っている男がいる。

見覚えのない顔。眉目に切れ味があり、いかにも要領のいい実務家といった雰囲気だ。湊がいつも連れ歩く秘書やアシスタ...

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