第106章

「白鳥美咲は首を吊ったんじゃない」

神崎結菜はそう言って、隣にいた検視官へ顔を向けた。

「瞳孔の状態が、おかしいです」

検視官が身を乗り出して覗き込み、わずかに表情を変える。

警官が眉をひそめた。

「神崎さん、現場に争った形跡はありません。シーツは窓の手すりに結ばれていて、足元には倒れた椅子も……」

結菜は白鳥美咲の遺体を丹念に確認する。目立った外傷はない。

爪はきれいで、皮膚片も付着していない。死の直前に激しく抵抗した形跡が見当たらなかった。

だが――首の索状痕の位置が違う。

通常、縊死の索状痕は下顎角の上あたりから斜め上へ走る。けれど白鳥美咲の首に残る痕は、ほとんど水平...

ログインして続きを読む