第108章

「結菜、お願い……ここに置いてちょうだい……」

沢渡恵子は涙でぐしゃぐしゃの顔のまま縋りつき、しかしその瞳の奥には、刃みたいな色がちらりと走った。

「うちを匿ってくれないなら、外で首を吊るわよ!」

「そうなったら世間はみんな知るのよ。神崎家の末娘は恩知らずで、育ての親を死に追いやったって!」

神崎結菜は眉を寄せ、夫婦を見つめた。――沢渡家が潰れたのなら、沢渡詩織は?

この二人が神崎家に駆け込んできたのに、どうして詩織は来ていない。

それに……恵子のこの必死さは、ただの「助けて」じゃない。どうしても神崎家に居座らなきゃいけない、そんな切迫がある。

沢渡夫妻は自己中心的で、損得で動...

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