第百十九章

当初、景介は警察署で織田香織に別れを告げた。

表面上は何も変わっていないように見えたが、このところ彼は明らかに沈んでいた。

このタイミングで外へ出るのは、単なる仕事の都合とは思えない。

しかもあの日の夜、彼は慌ただしく家を出て「一週間の出張だ」と言った。

一週間後に戻ってくれば、織田香織の件も決着がつく頃だ。

「公判の日、行くのか?」

神崎徹が彼女を見る。

神崎結菜は少し考えてから頷いた。

「行く。……彼女に聞きたいことがあるの」

ずっと腑に落ちないことが二つあった。

織田香織が父に使った薬剤は、どこから手に入れたのか。誰が彼女に渡したのか。

それに、あの“じわじわ効く...

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