第124章

「結菜――結菜、俺が悪かった。頼む、俺のそばに戻ってきてくれ!」

神崎結菜は鼻を突く酒臭さに思わず半歩退いた。目を凝らすと、目の前の林川真司はふらふらと身体を揺らし、顔は真っ赤。それなのに彼女を見つめる目だけが、妙にぎらついていて怖いほどだった。

抱きつこうと腕を伸ばし、舌の回らない声で言葉を垂れ流す。

「沢渡詩織は……俺のことなんて本気で愛してなかった。利用してただけだ……。俺、間違ってた。結菜、戻ってくれないか? 俺がお前の婚約者だろ……」

神崎結菜は迷いなく手を振り抜いた。

ぱんっ!

乾いた音が廊下に弾け、林川真司の顔が横に弾かれる。よろけて二歩、三歩。ようやく踏みとどまっ...

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