第132章

「出た」

神崎結菜の声が、微かなノイズを伴ってイヤホンへ滑り込んできた。

末広貴子が息を吐く。

「東側の交差点。3分」

ワンボックスが次の角で鋭く切り返し、二つ先のブロックを回り込んで東側路口の路肩に急停車した。

バックミラーに神崎結菜の姿が映る。斜向かいの低い塀の陰から足早に現れ、歩きながら右腕に巻き付けていた配線をぶちっと引き剥がしていた。

左肩のジャケットには裂け目が走り、奥の濃いグレーの裏地が覗いている。

七海がドアを押し開ける。

「ボス、早く!」

神崎結菜は身を屈めて車内へ滑り込み、硝煙と埃が混じった匂いをまとっていた。

シートベルトを差し込んだ瞬間、運転手がア...

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