第百三十九章

神崎結菜は二十分ほど待った。山道の向こうから黒いセダンが現れ、速度を落として脇門へと滑り込む。

運転席から降りてきたのは定村昌二。手には銀色の金属ケース。門前の虹彩認証装置の前で、彼は軽く身をかがめた。

結菜はスマホを肩の高さまで持ち上げ、ガラス越しに動画を回す。

四十分後。定村昌二が脇門から出てきたとき、手にあったはずの金属ケースは消えていた。

結菜は撮った素材を、しろのフォルダへ送信する。

その夜、不破蓮の張り込み役から連絡が入った。

『三ノ宮裕臣が目を覚ました』

結菜は即座に判断する。療養院は、今はまだ踏み込めない。昼間の出入りは目立ちすぎるうえに危険度が高い。夜に動くな...

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