第141章

「彼女の記憶中枢に損傷があるわ」

神崎結菜が低い声で言った。

「でも、外傷だけが原因じゃない。体内に残っている神経結合タンパクが、シナプス間の信号伝達を自発的に抑え込んでる」

金木幸也が血液分析の比較データを呼び出す。

「濃度は昨日より約7%低下。今の代謝速度なら、2週間で通常の記憶に干渉しないレベルまで落ちる。ただ、その2週間は断片的な欠落が何度も起きるはずだ」

その日の午後、神崎結菜は二階の小さな個室にこもった。

机の上には不破お婆さんの毒理学レポートと、沢渡詩織の血液検査結果。脇には、北山研究所から持ち出した書類の断片をつなぎ合わせて復元した分子構造の簡式が数枚。

――や...

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