第50章 ひざまずいて俺に頼め

神崎結菜は廊下の突き当たりにある客室のドアを押し開けた。足を踏み入れようとした、その瞬間――稲妻が走り、部屋の中がいっせいに白く焼けた。

続けざまに落ちた雷鳴は、まるで頭上で何かが砕け散ったみたいで、窓ガラスがびりびりと震えるほどの大音量だった。

結菜はびくっと肩をすくめる。すると次の瞬間、背後から伸びた温かな手のひらが、彼女の耳をふわりと覆った。音が一気に遠のく。

ひやりとした冷杉の香りが、背中から押し寄せてくる。包み込まれるような匂い。妙に落ち着く。

まだ灯りも点けていないのに、稲光の影絵で窓に映る彼の姿が見えた。視線を落とし、彼女をじっと見つめている。

心臓が、どくんと跳ねた...

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