第75章 何かおかしい

梁原明里は眼鏡を押し上げ、事務的な口調で言った。

「不破代表の承認書はお持ちですか?」

神崎結菜は彼女を見据える。

「ありません」

「それなら、難しいですね」

梁原明里は肩をすくめ、隙のない言い方で続ける。

「このエリアの監視カメラは所長のサインがないと閲覧できない規定なんです。今日は所長が不在ですし、別日に――」

「私のサンプルに手が入っています。今すぐ確認しないといけません」

梁原明里は小さく息をついた。

「神崎さん、別にあなたを狙ってるわけじゃありません。研究所のルールです。誰に対しても同じ。あなたはまだ来て日が浅いから、こっちの手順を――」

「それでも、見せないっ...

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