第85章

金曜の午後、神崎結菜が神崎家へ戻ると――リビングのソファで、神崎徹がぼんやりと宙を見ていた。

「徹、どうしたの?」

徹ははっと我に返り、顔をぐいっと拭う。

「いや……ちょっと緊張してさ」

「前も何回もレース出てたでしょ。なんで今回はそんなに緊張してるの?」

結菜が笑い混じりに訊くと、徹は顔を揉んでから、はあっとため息を落とした。

「お前には分かんねーよ。今回は強いのが何人も来てんだ。R国から来たってやつもいて、去年のチャンピオンらしい。負けたら……恥、かきすぎて死ぬ」

結菜は横目で徹を見た。

「いつからそんなに勝ち負け気にするようになったの」

「勝ち負けは気にしてねー。でも...

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