第86章

「彼女、昔海外でサーキット走ってたんだ」神崎徹が慌てて言った。声が少し裏返っている。「運転、俺より上だよ」

不破蓮は取り合わず、顔を向けた先は神崎結菜だった。

結菜は視線を受け止める。「心配しないで。自信がないなら、そもそも出ない」

不破蓮は二秒だけ黙り、手を伸ばして彼女のヘルメットを取ると、あご紐の締まり具合を確かめながら調整した。

「安全第一だ」

結菜は、こんなにあっさり許可が下りると思っていなかったのか、一瞬きょとんとする。

「無茶なドリフトはするな。タイヤがタレる」不破蓮はヘルメットを戻しながら淡々と続ける。「三つ目のコーナーは複合だ。進入速度は……自分で分かってるだろ」...

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