第68章

「うっせえんだよ、糞が」

大志は呂律の回らない舌で毒づいたが、その声はバーの喧騒にかき消された。

アルコールで頭が重く、視界がぐるぐると回っている。

「どいつもこいつも、消え失せろ」

一人になりたかった。あの女の顔を脳裏から引き剥がしたかったのだ。

「切らないで、大志」紗奈の声には、焦燥と甘えの混じった鼻声が絡みつく。「すごく心配してるのよ。一人なの? 飲んでるの?」

「知ったことか」

彼は乱暴に吐き捨て、通話終了ボタンを押そうとしたが、指が言うことを聞かず、画面の上を空しく滑った。

その時、新が横から割り込み、手からスマートフォンを奪い取った。画面を一瞥し、マイクに向かって...

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