第82章

彩乃は顔を上げ、大志に視線を走らせたときは笑みを浮かべていたが、朱月を目にした途端、その表情は能面のように凍りついた。

「来たのね」

彩乃はそっけなく応じると、すぐに隣の香織へ向き直った。

「香織、こちらがよく話している大志よ」

香織は優雅な所作で立ち上がり、大志に視線を注いだ。

「緑川さん、お噂はかねがね」

大志の横に立つ朱月の存在は、二人の女によって完全に黙殺された。

ほどなくして晩餐が始まった。

長いテーブルにはクロスが敷かれ、頭上のシャンデリアの光を受けた銀食器が冷ややかな輝きを放っている。

彩乃は上座、大志はその右手、香織は大志の向かいに座った。

そして朱月は、...

ログインして続きを読む