第89章

さらに、紗奈は一本のボイスメッセージを送信していた。

声を潜め、そこには驚愕と怯え、そして抑えきれない悔しさが滲んでいた。

「大志……私、相沢さんに謝ろうと思って戻ってきたの。そうしたら……朱月があそこで、男の人と……信じられない、アトリエの二階の小部屋で……私、怖くて……」

送信から十秒も経たずに、紗奈のスマートフォンが震えだした。

大志からの着信だ。

紗奈が通話ボタンを押すや否や、受話器の向こうから大志の怒号が響いてくる。

鼓膜が破れそうなほどの大音量だった。

「あのクズはどこだ!? まだ屋敷の中にいるのか!?」

紗奈は小部屋の方を一瞥し、怯えた声を装った。

「ええ……...

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