第84章

ネクサス株式会社の本社は、一企業というより、巨大なプライベートガレージと公文書館を融合させたような場所だった。

受付を抜けても、そこにはパーティションで区切られたオフィスも、会議室も存在しない。あるのは天井まで届くサーバーラックの列だけで、それらが低い唸り声を上げながら静かに稼働している。

黒縁メガネにチェックのシャツを着た、周防緋音よりいくらか年上に見える白人の青年が、ガラス張りの独立した研究室へと彼女を案内した。その空間で最も目を引いたのは、最新鋭のハイテク機器ではない。壁一面の黒板だ。そこには、すでに黄色く変色したチョークで、びっしりと数式が書き込まれている。

白髪交じりの長身痩...

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