第89章

彼女は自分のスマートフォンを手に取った。弁護士にかけるわけでも、辻本十流にかけるわけでもない。

彼女がダイヤルしたのは、白川和夜の番号だった。

コール音は鳴らず、ほぼ瞬時に繋がる。

「囲まれたな」

白川和夜は平然と断定した。

「意外そうじゃないのね」

周防緋音の声に、狼狽の色は微塵もない。

「意外なのは、彼がこれほど愚かな手を使ったことだ」

受話器の向こうで、白川和夜が微かに鼻で笑った。

「愚かではない。傲慢というんだ」

「こうして君を封じ込めれば、大人しく従うと思っている」

「今どこにいる?」

「サンフランシスコ。ネクサス株式会社のラボよ。入り口には、私を産業スパイ...

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