第93章

奇跡は、唐突に訪れた。

スクリーンに映し出されたあの凶悪な寄生アルゴリズムが、チップ内のデータに触れた瞬間、まるで真夏の陽光を浴びた残雪のように、急速に溶解し始めたのだ。

十分とかからずに、あの難攻不落と思われた障壁は、跡形もなく消滅した。

「なんてことだ、まさに神の御業じゃないか!」

実験室に、抑えきれない歓声が爆発する。

ロバートは興奮のあまり、紅潮した顔で周防緋音を見つめた。

「緋音、やったぞ。僕たちの成功だ」

しかし、周防緋音は首を横に振った。彼女の視線は、第一層の暗号化が解除されたメインスクリーンに釘付けになっている。

「いいえ」

「これはまだ、始まりに過ぎない」...

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