第11章

聖女が去った翌日の深夜、私は一人で魔王城の地下深くにやって来た。

ここには魔王本人すら知らない秘密の部屋がある。

これも、以前ある深夜にダンジョンを攻略していた際、ごく一部のプレイヤーしか知らない隠しイベントとして、偶然迷い込んだ場所だった。

黒曜石で造られた密室の壁には、十数個の遠隔監視が可能な魔法水晶が嵌め込まれている。そのうちの一つにそっと触れると、画面には聖女が人間の領地にある宿屋で、明かりを頼りに夜通し様々な古文書を読み漁っている姿が映し出された。

「本当に勤勉なこと……」

私はあの正義を自称する女を、冷ややかに笑いながら見つめた。

受動的な防御だけではもう...

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