第8章

 すべての始末がついた。

 F市の空はようやく晴れ渡り、明日の朝にはN市へと帰る手はずになっている。クローゼットの前に立ち、この一月で増えた身の回りのものを整理していると、お腹の中の赤ちゃんがとん、と蹴りを入れてきた。まるで「早くおうちに帰ろう」と急かしているみたい。

 最後の数着を丁寧に畳み終えたその時だ。クローゼットの上段から瀟洒な木箱が滑り落ち、パシャリと鈍い音を立てて絨毯の上に転がった。弾みで蓋が開き、数枚の写真が散らばる。

 そのうちの一枚を拾い上げ——私は息を呑んだ。

 写真の中の私が、F市大学の図書館の前に立っている。淡いブルーのワンピースを纏い、胸に本を抱えて。それは...

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