第100章 彼は浅野莉緒を愛している

 吉野結人ははっと身を翻し、寝室の反対側にあるジュエリーテーブルへ駆け寄った。

 机の上には、結婚してから彼が少しずつ莉緒に贈ってきた宝飾品が、そのまま並んでいる。

 だが、テーブル下の引き出し――莉緒の母が遺した古いアクセサリーをしまっていた場所は、空っぽだった。

 莉緒の記憶だけが、丸ごと持ち去られている。

 残されたのは、『吉野夫人』の値札がぶら下がった、きらびやかな枷だけ。

 これは拗ねたとか、駆け引きとか、そんなものじゃない。

 ――本当に出ていったのだ。もう戻るつもりはない。

 吉野結人は膝から力が抜け、その場に崩れ落ちるようにして床へ膝をついた。

 少し前、莉緒...

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