第11章 忘れたのか?これは君の先輩だよ

小林莉那は、照れたように一拍置いてから、ふわりと柔らかな声で言った。

「ありがとうございます、看護師さん。……彼は、とても優しいです」

 吉野結人は口を開きかけた。否定しようとした――はずなのに、何かを思い出したのか、結局なにも言わない。看護師の言葉を黙認した格好だった。

「はあ?! 旦那さん?! 恥ってもんがないのかよ!」

 早川渚は瞬間、かっと頭に血がのぼり、足を踏み出して部屋へ突っ込もうとする。

「渚!」

 莉緒が咄嗟に腕を掴み、強く引き止めた。

 彼女は扉を睨みつけたまま、みるみる顔色が真っ青になっていく。それでも、頑なに首を横に振った。

「……行かないで」

「なん...

ログインして続きを読む