第112章 一人の女のためにお前の母親を脅す

 そう言いながら、男は小林莉那を力ずくで病室の外へ引きずり出そうとした。

 荒い息を吐いていた吉野結人が顔を上げ、その光景を目にした瞬間――表情が、ふっと抜け落ちた。

 次いで、喉を裂くような怒号。

「触るな!」

 どこにそんな力が残っていたのか。押さえつけていたボディーガードを乱暴に振りほどき、吉野結人は飛びかかった。足を取られてよろけた小林莉那を抱きとめ、奪い返すように胸へ引き寄せる。

 ぎゅっと、壊れものでも抱くみたいに。

「誰にも触らせない!」

 あまりに唐突な展開に、全員が固まった。

 ボディーガード同士が顔を見合わせる。

 さっきまでこの女の首を絞め殺しかけてい...

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