第125章 縁も使えばすり減っていく

 「有効な署名……?」

 いつ、俺が離婚協議書にサインしたっていうんだ。そんなはずが――。

 だが次の瞬間、脳裏にひとつの場面が、唐突に割り込んできた。

 たしか二か月ほど前。母の見舞いで病院へ行ったとき、母はこう言ったのだ。いくつか財産の整理をしておきたい、死んだあとに揉め事を残したくない――だから書類に署名してほしい、と。

 そのとき吉野結人は、浅野莉緒の流産と、小林莉那の件で頭がいっぱいだった。

 ろくに目も通さず、言われるまま自分の名前を書いた。

 ――まさか。

 母は、あの財産関係の書類に離婚協議書を紛れ込ませていたのか。

 すべての筋が繋がった瞬間、吉野結人の喉か...

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