第126章 彼女はあなたを怖がるだけだ

 吉野結人はよろよろとよろめきながら、法律事務所の正面玄関へ飛び込んだ。

 受付の女性がぎょっとして、椅子から跳ね上がりかける。

 だが止める声をかける間もなく、結人は勢いよく脇をすり抜け、廊下の突き当たりにあるオフィスへ一直線に駆けていった。

「柴田先生! 柴田先生!」

 喉が裂けるほどの叫び声。結人は扉を乱暴に押し開ける。

 物音に気づいた柴田は、ゆっくり顔を上げた。そこに立っていたのは、目を真っ赤に充血させ、今にも噛みつきそうな男――吉野結人。

 驚きはしなかった。

 いずれ、結人は知る。そういうことだ。

「吉野さん」

 柴田は眼鏡を外し、落ち着いた所作で立ち上がる。...

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