第128章 莉緒、私について来い

 けれど、彼女の仕事はようやく軌道に乗り始めたばかりだった。あのデザインも、あのオーダーも、少しずつ積み上げてきた血のにじむような努力も……。

 クロエは彼女の迷いを見抜いたように、一歩近づき、声を落とした。

「浅野さん、安藤さんから伝言です」

 浅野莉緒が顔を上げる。

「パリのアトリエのことは、気にしなくていい」クロエは続けた。「安心して離れていいって。残りは全部、私が引き受ける。片がついたら、その先のことはまた考えよう――そう言ってました」

 浅野莉緒の目元が、たちまち熱くなる。

 安藤里穂に申し訳ない。

 もし安藤里穂が手を差し伸べてくれなかったら、自分はA市から逃げ出す...

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