第137章 ここで寝てもいいですか

 廊下の突き当たりで、吉野結人は二人の警備員に両腕をつかまれたまま、なおも必死にその先を見ようとしていた。

 ――何も、見えない。

 あるのは、がらんとした廊下の行き止まりと、たった今閉まったばかりの扉だけ。

「浅野莉緒!」

 掠れた声で叫ぶ。喉が裂けそうだった。

「出てこい! 出てきて、俺に会え!」

 返事はない。

 あるのは、廊下に跳ね返った声が、何度も何度も自分の耳に戻ってきて――やがて、空気の中に溶けて消えていく音だけだった。

 警備員はついに吉野結人を外へ引きずり出し、クラブの入口の階段へ放り出した。

 次の瞬間、雨が容赦なく叩きつけてくる。頭から肩から、骨の芯ま...

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