第144章 あと少しで彼女を見つけられたのに

 吉野結人は、自分がどうやって家まで戻ってきたのか覚えていなかった。

 ただ、ハンドルを握る手がずっと震えていたことだけははっきりしている。道中で信号を三つも無視し、対向車と正面衝突しかけたのも二度。

 クラクションも、怒鳴り声も、タイヤが鳴くブレーキ音も――何ひとつ耳に入らない。

 頭の中にあるのは、あのコートに咲いていたファイア・ローズだけだった。花びらが一枚、また一枚と目の前で燃え上がり、熱で瞼の裏までひりつくようで。

 車を別荘の前に乱暴に停めると、ふらつく足取りで扉を押し開けた。靴も脱がずにリビングへ駆け込み、ソファに崩れ落ちる。

 両手で額を支えた瞬間、こめかみがどくど...

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