第165章 彼女のためにそんなことをしてくれた人は、これまで一人もいなかった。

 浅野莉緒は着替えを済ませ、バスルームへ入ると、ゆったりと湯船に浸かった。

 出てきた瞬間、真っ先に目に入ったのは、ドアの外に立つ川崎綾人だった。腕には厚手のバスローブ。どうやらずっと、ここで待っていたらしい。

 莉緒の姿を見た途端、綾人の眉間がきゅっと寄る。

「なんで髪を拭かないで出てくるんだ」

 数歩で距離を詰め、ばさっとバスローブを広げると、彼女を隙間なく包み込んだ。

「こんな寒い日に、風邪ひいたらどうする」

 顔だけがちょこんと出た状態になって、莉緒は思わず笑う。

「そんなにヤワじゃないよ。お風呂入っただけだし。雨に打たれたわけでもないのに」

「今は身体が重いだろ。前...

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