第173章 人の善意を無視して

浅野莉緒は、画面に表示された「いい子」の文字を見つめて、またこらえきれずにくすっと笑った。

 スマホをぱたんと机に伏せ、そのままメールの続きを打つ。

 キーボードを叩いて、最後の句点を打ち込んだ――その瞬間、またドアがノックされた。

「どうぞ」

 クロエが扉を開けて顔をのぞかせる。

「浅野さん、お客様です。芸術関係のお仕事をされている方で、少しお話ししたいと」

 浅野莉緒は顔を上げ、わずかに目を瞬いた。

 今日は誰かと約束していた覚えはない。

 けれどこの仕事をしていれば、突然人が訪ねてくることが珍しいわけでもない。

「通して」

 ノートパソコンを閉じ、立ち上がる。

 ...

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