第174章 私を祝福しに来たのに

「彼、私より二つ上で、隣に住んでたの。毎朝、登校のたびに顔を合わせるんだけどさ。私、そのころツインテールで……見つけると、こう、ぐいって引っ張って逃げるの。追いつけなくて、悔しくて泣いてた」

 佐藤菜月は、懐かしむように言った。

 浅野莉緒の口元が、ふっとゆるむ。

「一回ね、あんまり強く引っ張られて痛くて。泣きながら家に帰って言いつけたの。そしたら――おばさん……さっき会った川崎のお母さんが、あいつの耳つかんでうちまで謝りに来た」

 菜月は肩をすくめる。

「玄関先でさ、耳が茹でたエビみたいに真っ赤なのに、ぜんぜん喋らないの。お母さんが後ろから背中押して、ようやく絞り出したのが『ごめ...

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