第179章 彼はあなたを陥れたかもしれない

「菜月、落ち着いて」

 浅野莉緒は佐藤菜月の肩を支え、できるだけ穏やかな声で問いかけた。

「最後に生理が来たの、いつ?」

 佐藤菜月の目から、堰を切ったように涙が溢れ出す。

 彼女は必死に首を振り、途切れ途切れに言った。

「覚えてない……結婚してから一回、流産しちゃって……それからずっと生理の周期が乱れていて……。病院にも連れて行かれて、先生に『妊娠しにくい体質』って言われたの。だから、そんな……私が妊娠なんて……」

 浅野莉緒は小さく息を吐いた。

「妊娠しにくいって、妊娠しないって意味じゃないよ」

 自分だって、そうだった。

 けれど――この世に、こんな都合のいい偶然があ...

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