第181章 彼女は確かに妊娠した

 川崎綾人はフライパンから目玉焼きを皿へすべらせると、そのまま麺を二束ほど鍋に放り込んだ。

 背中に貼りつくような視線が、どうしても離れない。川崎綾人は振り返り、浅野莉緒に困ったように笑いかける。

「……何見てんの?」

「綾人を見てる」

 川崎綾人の耳の先が、かっと赤くなる。口の中でぼそりと呟いた。

「口、うまいな」

 浅野莉緒は小さく笑った。けれど、その一瞬の温かさだけでは、胸の奥に沈んだ重さはどうにもならない。

 佐藤菜月が部屋から出てきたころ、ちょうど麺がテーブルに並んだ。

 目はまだ腫れていて、顔色もひどい。昨夜はほとんど眠れていないのだろう。髪は雑にポニーテールにま...

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