第205章 君を殺したのは僕じゃない

 川崎綾人は咄嗟に浅野莉緒の腕をつかんで引き止め、彼女に小さく首を振った。それから半歩だけ前へ出て、できるだけ柔らかな声を作る。

「おばさん、怖がらなくていい。俺たち、悪い人間じゃないよ。お腹すいてない? 喉、渇いてない? お水、持ってくるから……飲める?」

 安藤婆さんは返事をしない。ただ、獲物を見据えるみたいに莉緒を睨みつけたままだ。

 莉緒はもう一度だけ、そっと距離を詰めた。攻撃してくる気配がないのを確かめると、恐る恐る手を伸ばし、彼女が握りしめている灰皿を外そうとする。

 綾人の心臓が、どくんと跳ね上がった。今すぐ引き戻したい――そう思った、その瞬間。

 不思議なことに、安...

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