第206章 心に残る疑惑

 川崎綾人は秘書とともに浅野莉緒と祖母の身体を支え、ソファへ座らせると、慌ててぬるめの水を注いで手渡した。

 浅野莉緒はコップを受け取った。指先は氷みたいに冷え、震えでまともに持てない。

 しばらくして、彼女は顔を上げた。同じように蒼白で、焦点の合わない目をした祖母を見つめる。

「おばあちゃん……あの人……あの人の言ってたこと、本当なの? ママが……ママが、ほんとうに……」

 祖母はそっと目を閉じた。堪えきれなかった濁った涙が、深い皺の刻まれた頬をつたって、ぽろぽろと落ちる。

 祖母は浅野莉緒の手を強く握り返した。信じられない、という気持ちは同じだった。

 浅野秋子が亡くなったの...

ログインして続きを読む