第228章 稀に見る良い夢

浅野莉緒は、それ以上何も言わなかった。

 川崎綾人の言葉は、ぬるい漢方の煎じ薬みたいだった。苦い。けれど、その苦さが、震えていた指先を少しずつ落ち着かせていく。

 彼の胸に身を預ける。耳の奥で、どくん、どくんと、落ち着いた力強い鼓動が鳴っていた。張りつめて、今にもぷつんと切れそうだった神経が、ようやくほどけていく。

「綾人……」

 目を閉じたまま、小さく呼ぶ。

「うん」

「……疲れた」

 本当に、疲れていた。

 ここ数日、積もりに積もった怒りも、恐怖も、悲しみも、重たい鐘みたいに胸の底へ沈んでいて、息をするだけでさえしんどい。

 川崎綾人は顔を伏せ、そっと唇を彼女の髪のてっ...

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