第244章 母校へ戻る

 市役所を出ると、午後の日差しがちょうどいい具合にあたたかかった。

 川崎綾人は玄関先で少し足を止め、横顔で彼女を見て、ふっと思いついたように言う。

「まだ時間あるよな。どこか適当に歩かない? ……二人きりで」

 浅野莉緒は一瞬きょとんとして、すぐに察した。

 たった今、人生を共にすることを決めたばかりなのに、この先には先の見えない危険が待っている。だからこそ、こうして盗むように手に入れた短い安らぎが、いまの二人には何より必要なのだ。

 彼女は彼の手を握り返し、指を絡めた。

「うん」

 川崎綾人は車を出し、A市の見慣れた通りを流す。行き先なんて決めていない。ただ、あてもなくハン...

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