第29章 底知れぬ狡猾さと、正体不明の視力……本当に『お似合い』の組み合わせね

吉野結人の顔色は、いっそう険しくなった。

 彼は莉緒の言葉には乗らず、何の前触れもなく立ち上がると、その長い脚で一気に距離を詰めてきた。

 莉緒が反射的にあとずさろうとした、その瞬間。彼のほうが早かった。コートのポケットに手を差し入れ、スマホを抜き取る。

「何するのよ! 返して!」

 莉緒は取り返そうとしたが、力が違いすぎた。

 吉野結人は片手であっさり彼女を押さえ込み、そのまま顔認証でロックを解除する。指先が画面の上を素早く走った。

 やがて、彼はスマホを突きつけるように掲げた。

「莉緒、まだ何か言うことあるか?」

 莉緒はちらりと画面を見て、はっと息をのんだ。

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